2013/05/09

Alphonse Mucha, ミュシャ展 2013/05

  「ミュシャ展」へ行ってきました。ミュシャが1900年ごろに作成した広告ポスターの数々。次々と展開される”ミュシャ☆マジック”に心が踊りました。それぞれの商品のアピールポイントを的確に選び(これは販売側の依頼かも?)、そのポイントを引き立てるための装飾、色の選択、曲線を使った流れるデザイン...。焦点がぶれず、見る人を”一目”で”うっとり”とさせるそのテクニックがとにかく素晴らしい。もしタイムマシーンがあるなら...その時代へ行って、街に貼られたポスターを見たい!そしてパリ万博へ行って、ミュシャがデザインした万博内レストランのメニューをもらってきたい!そう思ってしまいました。
(写真はカタログを撮影したものです。左が「月と星」右は「シャンパン会社のポスター」これがとても素敵だった☆ 是非”本物”を☆)



  その華やかな広告に必ず登場する女性が身につけているスラヴ民族衣装。ただ華やかなファッションとしてミュシャが描いたのではなく、そこにはチェコ人としての”誇り”と”思い”が込められているのだそう。パリで活躍しながらも故郷への思いを強く持っていたミュシャの魂こもった「スラヴ叙事詩」という作品。制作に20年を費やしたその作品は、苦悩の歴史を持つ祖国への強い思い、愛のエネルギーを感じる、ポスターの華やかさとは別の世界でした。

  祖国を離れ、長く海外生活を送っていたミュシャを受け入れられないチェコの人々の気持ちもあったようで、そんな人々の思いを感じたミュシャには、チェコでの制作活動に迷いもあったのだそう。その迷いから抜け、制作活動へと心を決めるきっかけとなったエピソードが、同じチェコ人の”スメタナ”の音楽(交響詩「わが祖国」)をバックにイヤホンガイドで紹介され、センチメンタルになり、少し”ぐっ”と来てしまいました。物悲しさを乗せたようなその旋律がミュシャの心をも語るようでした。

  私たち日本人の文化が、神道、仏教、儒教をベースに形成され、その文化的背景があるから理解できる物語や日本の神話があるように、チェコ人のミュシャが描いたこの「スラヴ叙事詩」の世界は、そのような文化で育った私には完全に理解できなかったけれど、その苦悩や神への祈り...そのエネルギーはあふれるように感じられました。

  キリスト教になじみの薄い私たちでもどこかで耳にしたことがある「天にまします我らの父よ」という一節。その一節で始まる代表的なキリスト教の祈祷文「主の祈り」を、ミュシャが独自の視点で解釈し、絵画的に表現した挿絵。キリストが弟子へ教えたとされるその言葉の背後の精神世界を、ミュシャが彼の感じるままに描いた絵と文もまたとても印象に残りました。*カタログから翻訳の単語を抜粋させてもらいながら、要約を掲載させてもらいます。かなり省いているのでミュシャの魂こもった”思い”は、是非会場で鑑賞してください☆)


『神は、
”至高の存在”に近づこうとしている人類へ、
真理の光を照らす。

人々は、
それぞれの魂を貫くその”光”へ
少しずつ近づこうと突き動かされる。

そして、やがて、
その未知なる力、”愛”が、
人類の心を満たし始める。』


『自分自身の”存在”に気づき、
その”光の源”を目指す人類は、

一条の光を頼りに、

思いやり深い神の案内人に助けられ、導かれつつ、

自らの意志で、

「生きる」ということを覚醒させてくれた”至高の存在”に
出会うのである。』


ミュシャ展カタログ表紙


ミュシャの挿絵が貼られ、当時発売された香水瓶の中に、香水が入ったままで展示もされていて、ゾクゾクしてしまいました。そろそろ終了してしまうので、もしご興味があったら、早めに行かれるのがいいかと思います。サイトでは混雑状況も確認でき、夕方以降が比較的空いているようです。夢の世界へ連れて行ってもらったような『ミュシャ展』。オススメです。

 
『ミュシャ展』公式サイト → ☆★☆


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